2017年11月25日 平賀さち枝 まっしろな気持ちで会いに行くツアー@京都UrBANGUILD

とてもとてもよかった。込み上げてくるたくさんの気持ちがあった。ライブが終わった後、「帰りたくない」そればっかり頭の中に広がって、仕方なく、1人三条のスターバックスでぼーっとしていた。鴨川を挟んだ三条京阪のネオンが私は大好きだ。
京都で遊ぶようになって何年も経って、寝てるとき以外は京都にいるくらいなのに、いまだに山科を経由して三条に降り立つと、三条大橋から鴨川の写真を撮る。どこにアップする訳でもないのに。それくらい、どうしようもなくワクワクしてしまうのだ。観光客で忙しい場所のはずなのに、ゆっくり時間の流れているこの風景が、とてもとても愛おしい。

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さっちゃんのライブはとても久しぶりで、ワンマンは初めてだったかもしれない。一曲目に、河原町がどうとか、東山がどうとかいう、京都の男への失恋の曲をカバーしてて、それがとても良かった。終わった後に物販で曲名を本人に聞いたら、「京都慕情っていうんだよ、youtubeにもあるよ」と教えてもらった。


京都慕情 - 渚ゆう子

 

この日のライブは京都で観れて、アバンギルドで観れて、本当に本当によかった。京都の曲なんて一曲目だけだけど、あまりにたくさんの日常のワンシーンに馴染むさっちゃんの曲は、私の京都のたくさんの思い出に溶けて消えていった。大学も、社会人も、今も、ずっと。

今日のライブを観ながら、さっちゃんに伝えたいことがたくさんあるなあと、何を話そうかなと考えて、たくさんのやりとりをバカみたいに想像していた。そんなとき、彼女が歌っていた目黒川の「叶わぬ夢が いまだ心の中に それでもこんなに輝いて」という歌詞が頭の中に妙に響き、胸がいっぱいになった。大切なことは、大切にしたままでいいことを、そうやって歩いていくのも間違いじゃないと、私は今年たくさんの言葉の中で学んだのだった。

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当たり前の言葉が、さっちゃんの曲に乗ると、とても輝いて聞こえる。それがどれだけかけがえのないもので、愛おしい言葉だったかを、教えてくれるように。使い古した言葉が、丁寧に磨かれるように。

特に、新譜の「あけましておめでとう」を聴くと、そう思う。
私はこの曲が一番好きで、私が平賀さち枝を好きな理由のほとんどが詰まっていると感じる。

あけましておめでとう 今年もまた
大切なあの人の 笑顔が輝くよう

社会人になって最初か2回目の年末、箱根の温泉旅館で年越ししたことがある。

せっかくここまで来たなら特別美味しいものが食べたいという想いで、たまたまみつけたミシュラン一つ星の四千円のうな重を食べに行った。「ホイッスル!」の主人公と同じ名前の最寄り駅だったのを、よく覚えている。

行列を並びながら店内を見ると、みんな笑顔でうな重を食べていた。
正月だったこともあってか、家族連れのメンバーは、おじいちゃん、おばあちゃん、お父さん、お母さん、その子供という組み合わせがとても多かった。老若男女問わず、うな重が「美味しい食べ物」、そして共通の「幸せ」の記号として成り立つやわらかくあたたかい光景に、なんだかとてつもなく胸を打たれてしまった。

うなぎが高価で美味しい食べ物なのは周知の事実だけれど、その「当たり前」がその場の幸せをすべて食い尽くすような光景を、とても美しく感じたのだった。なんでもない光景なはずなのに、胸にグッとくるものがあった。みんなが揃って笑顔になれるものって、この世にたくさんはないと、私は思う。

そのときのことを、この曲を聴くとよく思い出す。
当たり前の言葉や時間が、かけがえのない価値を持って、目の前で光って見えるから。

「あけましておめでとう」という言葉だって、新年を祝う愛おしい言葉だったよな、と、そう思うのだ。

さっちゃんの歌には、そういう力がある。

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さっちゃんは歌詞を何度も忘れていたし、そのたびに演奏をやめては一生懸命絞り出すようにして歌詞を思い出していて、もう何年も前、大森靖子がさっちゃんを「出来上がってる子」と言っていたのは、音楽センスはもちろんだけど、こういう計算の入り込む余地のないドがつく天然具合が醸し出すどうしようもない可愛さなんだろうなと思った。とっても可愛くて、男性客がほとんどを占めているのもよくわかった。

ライブ中、突如始まった質問コーナーがあり、初めてこういう機会に手を挙げた。「いつも可愛い服着てらっしゃいますが、どこで買ってるんですか?」という間の抜けた質問だけど、ずっと気になってたので聞けてよかった。「ユニクロとかGUばっかりだよ!渋谷や原宿にも行くけど」とのことでした。

物販で、関西でも女子会をしてねとお願いして帰った。「さっきは質問してくれてありがと」と言ってくれて嬉しかった。アイドルの握手会みたいに、少ない時間で何を伝えるのか必死で、失礼な態度を取っちゃったかも。でも、いろんなこと聞けたし、特に手を挙げて質問したことなんか「私、もうこんなこともできるようになったんだ!」と、嬉しかった。今までならきっとそんな勇気なかったな。いろんなところで、私の一年の軌跡を感じる。

 

なんだか今でも余韻に浸れるようなそんなライブだった。こんな日に一人酒を飲んで帰れればよかったのにと、思う。
地下鉄は情緒がないとかいう理由で、京都慕情を聴きながら、わざわざバスに乗って帰った。