最近観たもの、聴いたものとか

在宅勤務の基本は、パジャマから着替えることらしい。なので、とりあえずスッキリを見ながら着替えてみるけれど、パジャマと仕事着の間になるような服がなく、結局Tシャツにジャージかステテコ。パジャマからパジャマに着替えているようで、外に出るのも気が引けるし、全く意味がない。某法案については、ツイートはなんとなく気が引けてしまい、自民党への投書と署名をした。

 

いろんな人がtwitterでおすすめしていた「ハーフ・オブ・イット」を観た。

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本当に、本当によかった。よく笑った割に、観ている間にまた考え事をしすぎて、でもそのすべてに答えが出た。日々の嫉妬も寂しさも愛も、この映画なら、淀みのないあたたかな温度で、うまく溶け合うと思った。主人公のエリーが東京の友達にそっくりで、会いたくなった。

 

前半のコメディの部分と音楽が結構ツボで、大笑いする。何回も見たくなるので、今もテレビで流し見しながら書いているところ。「フランシス・ハ」や「きみの鳥はうたえる」を見たときも思ったけど、一時間半くらいの映画が一番見やすくていい。2時間を超える映画を最近観ていない。集中力がもたない…。

 

そして一昨日は三島由紀夫金閣寺を読み終わった。タイトルで気づいて当然なのに、しばらく読んでから「あれ、これ京都の話じゃん」と気付くくらい、私は金閣寺にゆかりがなかった。

 

金閣寺 (新潮文庫)

金閣寺 (新潮文庫)

 

 

ちなみに私は以前、金閣寺からすぐそばの立命館大学に通っていた。卒業前に「さすがに4年もここに通ってて、金閣寺に行ったことないのヤバいなー」と思って、ゼミの友達と一緒に見に行った記憶がある。そのあと、ついでにわら天神もハシゴした。安産祈願の神社らしいけれど、なにやら妊娠祈願のためにお供えされたと思われる、木で一生懸命削ったのであろう、手作りの原寸大おちん・・・男性器みたいなものがいくつか置かれている場所をみつけて、ものすごく気まずかったことを覚えている。懐かしい。まあそれくらい、金閣寺と言われてピンとこなかったってこと。京都市内の人たちの観光地に対する感覚もだいたい理解できるので、金閣寺に対して異常な美の執着を持つ主人公が舞鶴の方の出身というのは、とても説得力のある話だと思った。

 

あと、京都の地理もだいたいわかるので、なるほど主人公が童貞を捨てに向かった新地の五番町って、千本日活とかのあたりか!と、勉強になった。この記事もおもしろい。

 

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作中に出てくる場所が在学時に身近な場所ばかりで、マジでなんで今読んでるんだと後悔するばかり…。せっかくだし、次は水上勉の「五番町夕霧楼」読みたいなー。三島由紀夫は文体があんまり好きじゃないので、一緒に買った「潮騒」は後回しにしようと思う。ちなみに今は「蟹工船」を読んでいる。あーあ、今私が大学生だったらよかったのに。あの頃に戻って受けたい授業が腐るほどあるよ。

 

そして2か月待ちくらいで、やっとニトリからリビングに置く新しい棚が届いた。日焼けするのが嫌で、本は物置に収納していたんだけれど、せっかくなので最近読んだ本だけそこに並べてみた。とても気持ちいい!カフェでも人の家でも、並んでいる背表紙を見てどんな人が住んでいるのか想像するのが好きだ。そんな気持ちを少し思い出す。この一か月くらいで、6冊の本を読んだ。普段、一か月に1冊が関の山の自分には、ありえないペース。早く古本屋に行きたい!今は読書に熱を注いでいるので、こうやってリビングに並べると達成感があり、しばらく読んだものは並べていこうと思う。

 

音楽はbeabadoobeeばかり聴いている。

 


beabadoobee - She Plays Bass (Official Video)

 

大学のときにやってたバンドみたいな音だなと思い、懐かしさでいてもたってもいられなくなり、当時のバンドメンバー何人かにURLを送り付けた。「あなたが作りがちなコード進行だね」と言われた。

 

昨年末、大学のときに長い間付き合っていた人が病気で亡くなったらしい。このことを、もう半年近く毎日のように考えている。今、愛だの恋だの微塵もないが、私の人生で誰よりも影響を与えてくれた人だ。今私の周りにいる人たちのほとんどは、彼と出会えていなければ誰一人として会えなかっただろう。

 

果たしてあの人よりも、命を削るように音楽を聴いていた人はいるだろうか。音楽の外に張り付く薄い膜を、一枚一枚はがして、その本質をきちんと説明できる人がほかにいただろうか。彼がいなければ、私は、スピッツの楽曲が、変態性のあるものではなく、きれいでかわいい音楽だと思っていたかもしれない。大学からの帰り道、最近出た新譜の話をしながら、毎日立命から一時間近くかけて京都駅に着く50番の市バスに乗っても、尽きることはなかった。当時はウィルコムというものがあったので、帰宅してもなお、それを使って音楽の話をした。彼はのちに音楽ライターになり、あるインディー雑誌の編集後記にはスペシャルサンクスとして私の名前が載っていた。

 

彼が教えてくれた音楽の中で最も響いたものが、私のような自意識の強い日陰者にとてつもなく優しい、へろへろな音楽だった。私は今でも、辛いことがあると、あの人が「こんなに優しいタイトルはほかにないよ」と言った、PAVEMENTの「Brighten the Corners」を聴く。

 

だから、いつの間にか自分のフェイバリットになったインディーでローファイな音を聴くと、市バスの中で一生懸命音楽を聴いていたあの頃を思い出す。Beabadoobeeはそういう音楽だ。

 

たまたまiphoneで聴いているとき、「あれ?シャッフルでPAVEMENTでもかかったのかな」と思ったら、この曲だった。タイトルを見て、涙が流れた。

 


Beabadoobee - I Wish I Was Stephen Malkmus (Space Cadet Sessions)

 

ギターがなかなか上達せず、弾くのが嫌で仕方がなかったときに彼は言った。

 

「スティーブン・マルクマスだってギター下手やん。でも、どの曲も最高に良い。音楽は、上手いとか下手とかじゃない。楽器持ったら誰だってできる、それがバンドのいいところやろ。やるかやらないか、それだけ。」

 

そう言われて納得した私は、自分にだってできるはずだと、一から人を集めてバンドを始めた。コピーじゃなくて、オリジナルバンドで。誰かの曲をコピーする時は技術がすべてになるけど、オリジナルだったら、PAVEMENTみたいに曲の良さで勝負できると思い、一生懸命曲を作った。

 

バンド活動は、苦しくて苦しくて苦しくて、でも何よりもきらきら輝いて汚れなく眩しい、遅めの青春時代だった。彼の後押しがなかったら、卑屈な私がこんな挑戦なんかできなかっただろう。

 

…人が生きる意味について、ずっと考えている。

 

好奇心と探究心の中に渦巻く自尊心を、すべての行動の糧にしたっていい。わかる人にしかわからなくていい。たとえ哀れでも、もうそこにいなくても、それだけは、私だけは、決して否定しないぞと、毎日決意する。あんたがいなくなって、私ができることなんかそれくらいしかないよ。